2018年9月に経済産業省から『DXレポート』が発表された。そのタイトルには「2025年の崖」と記されており、企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の遅れに対する警鐘を鳴らしている。
その原因の一つは、ブラックボックス化した既存システムにあると指摘されている。既存システムが残り続けることは、デジタル変革を阻害するだけではなく、システムの老朽化に起因するトラブルやデータ消失のリスクが高まり、その経済損失は2025年以降、年間で最大12兆円にも上ると試算されている。
各企業は、DXの壁を克服するがために、基幹系システムを始めとした業務システムのモダナイゼーションに取り組むであろうし、システムの移行先としてパブリッククラウドを選択するといった事例は、今後ますます増えていくであろう。
しかしながら、既存資産のクラウド移行は決して簡単ではないと考えている企業も数多くあると考える。まずは小規模な既存システムからクラウド移行を行うべく検討を重ねたものの、「ダウンタイムやセキュリティが心配」といった心理的要因が大きく働いた、また、移行は実現したもののコストが思ったよりも下がらなかったなど、クラウドのメリットを充分に享受できなかった経験もあったのではないだろうか。
これらの経験は、クラウドの特性を正しく理解せず、オンプレミス環境と完全に同じインフラを構築しようとして起きたケースも多いと考える。クラウドの基本的な特性としては、以下が挙げられる。
・インフラ調達の期間が非常に短い(申し込みからサーバ立ち上げまで数分で利用可能。一方、オンプレミスの場合は物理ハードウェアを用意するため、機器によっては数ヶ月を要する)
・インフラ調達に係る初期費用が必要ない、若しくはごく低額しか発生しない
・インフラ運用に係る費用とサーバ、ネットワークなどの運用に係る利用者側の手間が非常に少ない
・提供されるサービスメニューからの選択となるため、インフラの柔軟性に制約が発生するが、メニューが豊富であり、かつ簡単にスペックの変更やリソースの追加が可能
・最新の機能はクラウド事業者側から提供され、利用者は常に最新の機能が使える
・使った分だけ料金を支払う従量課金制が基本である
そこで本レポートでは、業務システムのクラウド移行に焦点を当て、上記のクラウドの特性を最大限に活かすための移行をどの様に進めるべきか、その際に押さえるべきポイントとは何か、といったことをテーマに紹介していきたい。
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